自己組織化あれこれ

粘菌っていう単細胞生物がいる. 単細胞なので脳がない. 粘菌はたくさん集って群になる. 群体になった粘菌は訓練すれば単純な迷路の問題を解くことができる! 迷路の入口と出口にエサを置いておけば粘菌の群がにょにょっと伸びていって両者を繋ぐわけ.
ここで問題になるのが,粘菌は一個体では単純なルール*1に従っているにすぎないのに,何故群体になると知性的なふるまいを見せるのかという点だ. それぞれの個体は自律的に行動するのに,全体として見たとき何がしかの意味を持っているように見える. このようなシステムは司令塔がなくても勝手に組織を形づくる. これが自己組織化.
人間も自己組織化しているように見える. その代表例が都市だ. 例えばイギリスのマンチェスターのように都市計画を考える行政組織が存在しないまま急速に成長した都市は,無秩序な配置になるはずだが,実際には労働者層のエリアと中産階級のエリアにはっきりと区分される形で成長した. 中産階級のエリアは大通りに面し,労働者のエリアは都市の最深部にクラスター化する.
自然界には自己組織化の例が非常に多く存在する. 強化学習の研究はある一個体の機能に対応するが,それを沢山集めたマルチエージェントの環境では自己組織化の問題になってくる.

*1:自身もフェロモンを出しながら,フェロモンが濃密なところへ移動する